松島四大観Plus:#05番外3スポット-編(5/5回)
【眺望を楽しむ松島、四大観Plus:#05番外3スポット編】古くからある「眺望してこその松島」という声と景色を、宮城ゆかりの文人、島崎藤村は「松島の美は天の美と水の美なり」と残し、その変化こそを、見ての松島と表現する。そんな見晴らし絶景を儒学者の舟山萬年は、松島四大観(雄観・麗観・幽観・偉観)にまとめたという。残念ながら、そこまで行く時間がないというときの、眺望スポットを3つほど延長戦でご紹介。少なからず松島の満喫度は90%くらいにはアップするはず・・
日本三景随一の眺望を楽しんで、ホントの松島を満喫してみよう
松島四大観と、いけないときの眺望を楽しむ3スポット
日本三景随一と称される松島。なぜに随一と称されたかといえば、いくつかの古典を紐どくと「眺望してこその松島」ということにあるらしい。そして、自然の織りなす造形美と変化をしていく様々な顔、これで随一とするふしがある。
明治維新の精神的支柱ともいえる吉田松陰、彼は、諸国の視察で松島を訪れたとき、富山でのことを、次のように記している。”一眸無遺”(『東北遊日記』著・吉田松陰 より)と。たいへん短いひと言ながら、「なにものにもかえられぬ眺望なり」といったところでしょうか。
松島を眺望し自然美を感じ取ることが旅の本質ととらまえるならば、瑞巌寺に五大堂、円通院に、遊覧船、そして、牡蠣に穴子の観光グルメのスポットは、旅を織りなす外郭、外なすピースのようなもの。目玉焼きに例えるならば、黄身が眺望、白身がよくある観光スポット。両方ぺろりと食べてこそ、「満喫!松島三昧」。
ただ、眺望したほうが良いのはわかるけど、「松島四大観」のどれかに行くには時間が足りない。あなたもそんなひとりでは?
でも、安心してください。四大観以外にも眺望スポットはまだまだある。それがこちら、、
【松島四大観にいけないときの眺望スポット3】
スポット(1)新富山
スポット(2)西行戻しの松公園
スポット(3)双観山
そんなわけで、四大観とまではいかないまでも、旅の余韻をアップさせる3つの眺望スポットを一緒にみてまいりましょう。
【新富山】瑞巌寺からも歩いて10分、小路をのぼり広がる松島
スポット(1)新富山’Sフォト
この四阿(あずまや)に向かって左側に展望台。
むかしのガイドブック的なものを読むと、「四大観に行けないのなら、せめて新富山へ」がキャッチフレーズのように使われている。どことなく、目線の高さに水平線がるみたいで、立体感のある松島が堪能できるかと・・。
周辺地図
新富山データ
所在地 | 宮城県宮城郡松島町松島愛宕裏 |
徒歩 | 松島海岸駅より15分(およそ1.2km)*1 |
車 | 三陸自動車道 松島海岸ICよりおよそ3.9km*1 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
難 易 度 | ★☆☆☆☆ |
*1 グーグルマップのルートにて計測
*2 おすすめ度・難易度ともに四大観のなかで、三丈の独断と偏見による評価
ワンポイントアドバイス
瑞巌寺からも歩いて10分もあれば展望台までたどり着けます。JR仙石線をつかった観光なんてとき、手軽に展望できるのでおすすめです。ただ、最後は急坂になっているので、おしゃれ靴ではちょっと厳しい。
【西行戻しの松公園】伝説の松と桜とオシャレcafe、スマホ時代に映える松島
スポット(2)西行戻しの松公園’Sフォト
西行戻しの松公園の眺望スポットは4つ。(1)公園頂上、(2)西行戻しの松、(3)カフェ、(4)白衣観音展望台の各スポット。ということで、エリアごとに確認してみましょう!
エリア1 西行戻しの松公園の頂上からの眺望
思わず高いところから眺めたくなるので、小高い位置の一本松の根元がちょっと痛々しい。ただ、小春日和や爽やかな秋風を感じつつ、ベンチでくつろげる雰囲気のスポット。
エリア2 カフェ(カフェ ル・ロマン)および周辺からの眺望
ハイシーズンのカフェは混み混み・・。ただ、テラスから一歩でた開けた緑から望む松島もなかなかのもの。ぶらぶらしながら、あなた好みのスポットを探してみてはいかがですか?
エリア3 西行戻しの松の根元周辺からの眺望
上右の画像をご覧くだされ。中央より左に白いすじのように人工物がみえましょう。あちらはなんというか、防潮堤。あの奥が野蒜海岸になる・・。さて、あのエリア、江戸の中ごろもなんと白かった。何で白かったというと、東田塩田の白煙がたちのぼっていたから。なんとなく人工物の白さで残念さを感じますが、人の営みで江戸のむかしも白かった。まあ、そのようにとらまえると、いまもむかしも変わらぬ景色。
エリア4 白衣観音展望台からの眺望
カフェから1段あがったところに白衣観音展望がある。よくガイドブックなどで、桜の季節の松島の写真が使われているときには、なにげにココからのショットが多い。というわけで、桜の木の葉にフォーカスした画像をおいてみたり・・。
周辺地図
西行戻しの松公園データ
所在地 | 宮城県宮城郡松島町松島犬田2 |
徒歩 | 徒歩:松島海岸駅より16分(およそ1km)*1 |
車 | 三陸自動車道 松島海岸ICよりおよそ1.9km*1 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
難 易 度 | ★★☆☆☆ |
*1 グーグルマップのルートにて計測
*2 おすすめ度・難易度ともに四大観のなかで、三丈の独断と偏見による評価
ワンポイントアドバイス
時間に余裕があるならば、遊歩道をつかい歩いても良いかもしれません(真夏は避けるべし)。まぁ、複数人ならタクシー使ったほうがあんぱいです。なお、観光ハイシーズンは、長老坂と呼ばれる道路が超混みます。余裕を持ったお出かけを!
【双観山】小舟の時代の定番を、今もなお伝える松島の景
スポット(3)双観山’Sフォト
むかしは、左上の画像のような入り江に船を停泊させて、右上の画像のような道を登ったらしい。ちなみに、これは双観山の駐車場の反対側からのルートで、三丈は蜘蛛の巣まみれなりました・・。
行った日は、味処双観山はお休み・・。そして、四阿は、サラリーマン風なおじさんがタバコをのみのみ占拠・・。営業で疲れてたんでしょうかね。
周辺地図
双観山データ
所在地 | 所在地:宮城県宮城郡松島町松島大沢平 |
徒歩 | 松島海岸駅より24分(およそ1.8km)*1 |
車 | 三陸自動車道 松島海岸ICよりおよそ4.1km*1 |
おすすめ度 | ★★☆☆☆ |
難 易 度 | ★★★☆☆ |
*1 グーグルマップのルートにて計測
*2 おすすめ度・難易度ともに四大観のなかで、三丈の独断と偏見による評価
ワンポイントアドバイス
ドライブを兼ねているのであれば良いですが、松島海岸駅から歩いたりはあまりオススメできませぬ。たまに、45号線をコロコロ轢いて歩いている人もいるのですが、見ていてちょっとヒヤヒヤ。まぁ、トレッキングスタイルであれば、歩いても問題ありません。ただ、目と鼻の先に幽観の扇谷があることを、お見知りおきあれ。
『松島四大観Plus〜これぞ松島!超絶オススメな眺望スポット』(全5回)のまとめ
先人たちがみた松島・白鳥省吾-編
觀月樓は松島を正面に見て、景勝の地を占めてゐる。お給仕に出た女中さんは松島生まれだといふ。
『詩心旅情記』著・白鳥省吾 「雨の松島」より
「松島生まれならあまり景色も珍しくないだらう」
といへば、
「さうでもありません、夕日のうつくしいとき、月のよい晩など、ほんたうにいゝと思ひます。」
といふ。こんな言葉をきくと、日本人はみな自然詩人だと言ひたくなる。
実家のある築館からの帰り道、子どもをつれて松島駅に降り立った詩人の白鳥省吾。瑞巌寺に水族館と9歳の子どもをつれて、「父親らしいことをしている」と感慨深く雨の松島をしっとりあるく。そして、宿にもどっての、夕餉の女中さんとのほんのひとコマ。
どこにいても、どこにあっても、自然を慈しみ、いとおしむことができる。「ほら、あなたの身のまわりにも」と問いかけられているかのようですよ。
さぁ、旅に、散歩に、ドライブに、とりあえずでかけてみようじゃないか
日本ではじめて全図を記した伊能図の伊能忠敬、彼もまた松島に足跡をのこしたひとり。「ん?地図つくったんだから、観光じゃなく測量で通過しただけだろ!」って・・。さっ、さすが鋭い!
ただ、伊能が、地図づくりの歩みを始めたのが隠居して50才を過ぎてから。はじめて松島に来たのは20代後半のこと。銚子のあたりで船に乗り、家族旅行の松島観光。この時、牡鹿半島にある分浜の人がたまたま同船。せっかくなのでと仙台城下を案内してもらっていたそうな。
月日は流れ、牡鹿半島の測量で、仙台藩が手配した宿泊先に向かう。するとむかしの顔を思い出す。かつて松島に向かう旅路にて、10日ほど一緒に過ごしたあの人が、なんとこの家のご主人でした。20数年の時をこえ、思いでばなしで盃を交わす、そんな不思議の縁を経験しているのでした。
さぁ、あなたにも、旅に、ドライブに、おさんぽで不思議の縁が待っている。
松島の顔は一つとして同じ顔ではなく、いくらでも旅をかさねても良い
いいかげんまとめてまいりましょう。全5回で、「松島四大観Plus」と銘打ち、四大観(大高森・富山・扇谷・多聞山)と新富山に西行戻しの松公園、双観山の各眺望スポットを、三丈目線の駄文で並べてきましたが、いかがでしたでしょうか。
壮観(大高森)は「壮大なパノラマ」、麗観(富山)は「均整のバランス」、幽観(扇谷)は「静寂さの趣き」、偉観(多聞山)は「堂々たる力強さ」と、同じ松島の眺望ながら、異なる顔を表現したのが松島四大観。
いま少し言葉をかさねるならば、「空と海と陸の広さ」と「四方と色彩の調和」、「内湾のもつ静けさ」と「外洋の白波の雄々しさ」のように、それぞれが対であるかのようにも感じられますかね。さらにここに、朝暮に月夜、四季、天候による変化を加えていくと、松島の顔はどれほどあるのかと、思い知らされる。
そして、気がついた人もいるでしょう。この松島四大観をお伝えするのに三丈が設定した裏テーマは、松島を訪れし文人・詩人。書籍では手に入りにくいものもありますが、引用リストを手に図書館へGO!です(「せんさん資料室」の引用リストを参照されたし)。
それでは、シリーズのおしまいは、松島の顔はどれほどあるのかと、田山花袋の『一日の行楽』から「松島遊覧」の結びの一文を引用して、締めさせていただきましょう。
それでは、次のおさんぽで、バイバイブ〜
一軆、松島といふところは、避暑にでも行つて、長くゐて、ゆつくりとその勝をさぐらなければ、十分にその眞相を語ることの出来ないやうな處である。
『一日の行楽』著・田山花袋 「松島遊覧」より
シリーズ『松島四大観Plus〜これぞ松島!超絶オススメな眺望スポット』(全5回)
#01[壮観・大高森]空と海の共演、松島の壮大なパノラマを一望せよ
#02[麗観・富山]明治天皇・文人らも登りし美しき松島を一望せよ
#03[幽観・扇谷]松島の深山幽谷の趣を、扇にみたて一望せよ
#04[偉観・多聞山]外海の荒々しさ、白波と松島を一望せよ
#05[エクステンド]時間が足りない!?まだある松島を楽しむ眺望は・・←今回はココ
*1『鹽松勝譜』
宮城県内の多くの図書館が所蔵している『仙台叢書 』の别集第四卷にて閲覧可能。読み下すのは大変かもしれませんが、チャレンジしてみよう!